材料・応用化学科

研究内容

生命化学および物質化学分野

生命工学 »研究室紹介サイトへ

生命工学(バイオテクノロジー)は、生物学と工学との単なる組み合わせではなく、化学、物理学、そして、医学、生物学といった様々な学問が融合した学際的な学問分野です。私たちは、ナノ材料の特徴的な物理的化学的性質を理解し、これを新しい医療技術に発展させる研究を進めています。また、環境中の微生物や微量食品成分の効果についても研究し、人との関わりについて理解を深めています。

抗菌作用を示す銀ナノ粒子の分散液と電子顕微鏡写真

抗菌作用を示す銀ナノ粒子の分散液と電子顕微鏡写真

分析化学»研究室紹介サイトへ

「どのような形態で」存在するのかということを様々な手法を用いて明らかにする研究分野です。標的物質を分離・分析する技術は、化学一般、バイオ、環境、医療、食品など様々な領域で重要な役割を担っています。我々は、おもにバイオ分析および環境分析に関する研究を行なっております。また、得られた知見を元に人工バイオ分子を作製し、これを用いて生体機能の制御も試みております。

(a) 金属イオンの刺激に応答してダイナミックに構造を変化させる人工核酸。(b) 核酸アプタマーを利用したmRNAグラニュールのライブセルイメージング

(a) 金属イオンの刺激に応答してダイナミックに構造を変化させる人工核酸。(b) 核酸アプタマーを利用したmRNAグラニュールのライブセルイメージング

超分子化学»研究室紹介サイトへ

原子・分子が規則的に並ぶことによって、もともとの原子や分子には無い機能が発現することがあります。このような原子・分子の集積体を「超分子」と呼び、生命は、この超分子がさらに複雑に組織化されることで機能しています。シンプルな分子を巧みに集積させた新しい超分子を創出することで、光学材料・電子デバイス・生体材料・医療材料などの様々な分野に応用するための研究を行っています。

太陽光の有効利用を目指す超分子ナノファイバー内包波長変換フィルム

太陽光の有効利用を目指す超分子ナノファイバー内包波長変換フィルム

有機材料»研究室紹介サイトへ

有機材料とは、炭素を主要元素として、酸素・水素・窒素原子などで構成される物質(化合物)の総称です。私たちの生活空間にも、衣類(繊維)・プラスチック・ゴム・木材・紙・油脂・界面活性剤・食品など日常を直接支える製品はもちろんのこと、液晶・有機発光素子・有機半導体などの情報電子材料、人工臓器などの医療材料など先端技術を間接的に支えている基盤材料です。有機材料は、分子レベルからの材料設計が可能であり、私たち人間の身体が行っている生体機能などのように、いろいろな形態や機能を自由に選択できるという利点があります。この自由度の高い潜在的特長は、私たち研究者の開発意欲を駆り立てるのに十分な魅力を有しています。我々は主に、光に関する最先端材料の開発に取り組んでいます。

照射波長により選択的に発光色を変化できる新しい蛍光スイッチング分子システム

照射波長により選択的に発光色を変化できる新しい蛍光スイッチング分子システム

分子工学»研究室紹介サイトへ

分子の間の化学反応を促進させる物質を「触媒」と言い、工業的な化学プロセスのみならず、エネルギー製造や環境保全に重要な役割を担っています。例えば、水素と酸素を化学反応させて電気と水を作り出す燃料電池を動かすにも、太陽エネルギーからクリーン燃料を作るにも、自動車の排気ガスをきれいにするにも、触媒は欠かせません。環境とエネルギーに貢献する触媒物質のナノからマクロレベルにわたる基本設計と応用研究を進めています。

触媒の電子顕微鏡写真およびX線マッピング

触媒の電子顕微鏡写真およびX線マッピング

理論計算化学»研究室紹介サイトへ

数学や物理の理論、バイオインフォマティックス技術、コンピューターを高度に駆使することで、物質の構造や機能を詳しく調べ、設計・予測を行う研究分野です。我々は、理論計算化学の手法を使って、生命現象に関する医療品などの物質・環境問題で重要な触媒材料・電子材料などの様々な物質を解析しています。コンピューター上でナノサイズの世界を再現し、物質の構造や機能の起源、それらの可能性を探ります。同時に、医薬品や新物質の設計や発見する独自のソフトウェアを開発しています。特に、力を入れているのが、「分子を探索する技術」です。

化学工学»研究室紹介サイトへ

化学工学は、分子レベルでの反応機構解析から実規模装置を用いた実用化研究に至るまで幅広い研究 フィールドと関わりがある重要な学問・研究分野です。本研究室では、「環境・エネルギー」、「機能材料合成プロセス」、「バイオマス」、「デバイス」、「リサイクル」、「天然物」をキーワードとして、ナノ材料合成技術、機能デバイス開発、超臨界流体利用技術、バイオマス有効利用技術、省エネルギープロセス、 天然物回収プロセスなど多方面の研究を進めています。

機能材料合成とデバイス開発およびバイオマス変換

機能材料合成とデバイス開発およびバイオマス変換

高分子材料»研究室紹介サイトへ

高分子(いわゆるポリマー)を研究する分野です。高分子とは、分子量がおよそ一万を超える巨大分子です。プラスチックや繊維などの合成高分子、窓ガラスやシリコーンゴムなどの無機高分子、たんぱく質やDNAなどの生体高分子などの例のように、私たちの日常に深く関わっています。私たちは、「作る(合成)」、「調べる(構造)」、「使う(機能)」という観点から、ユニークな機能を持つ高分子材料を研究開発しています。

ポリアゾメチン型π共役高分子ナノ薄膜中のナノウォール構造

ポリアゾメチン型π共役高分子ナノ薄膜中のナノウォール構造

無機材料»研究室紹介サイトへ

無機化合物の性質・形・大きさなどを制御して、社会に役立つ材料を開発する研究分野です。金属酸化物やカーボンといった無機材料は、電子部品・触媒・建築材など様々な領域で重要な役割を担っています。我々は、新しい無機材料の設計・合成・デバイス化を行い、それらの物理化学的・電気化学的な物性や機能発現を目指す研究を行っています。

厚さ1 nmのシート形状をもつ酸化物ナノシート発光材料

厚さ1 nmのシート形状をもつ酸化物ナノシート発光材料

電気化学»研究室紹介サイトへ

物質の「酸化還元反応」、すなわち物質間の電子の授受によって生じる電気と化学エネルギー変換や物質変換などの取り扱う研究分野です。低炭素化社会を実現する電池などの蓄電デバイスの開発や呼吸鎖での電子伝達などの生命現象の解明など様々な領域で重要な役割を担っています。我々は、界面ナノ計測を主たる手法として、環境負荷低減が期待される新規ナノ構造形成や触媒デザインによる新たな機能探索、電気化学センサー開発、電極反応のメカニズム解明に関する研究を行っています。

高次フラーレンと白金ポルフィリンの超分子構造のナノレベル可視化

高次フラーレンと白金ポルフィリンの超分子構造のナノレベル可視化

酵素化学»研究室紹介サイトへ

酵素は、生体内で作られ、生体内の化学反応を触媒するタンパク質です。酵素化学は、酵素機能を分子レベルで化学的に理解する研究分野です。私たちは、酵素の設計図である遺伝子探索、酵素反応の特異性と速さ、酵素の分子構造などの解析を研究手法としています。この研究によって、酵素阻害剤の種(seed)になる化合物を探索して、酵素阻害剤としての効果を高めるためにドラッグデザインすることで、検査薬や治療薬の開発を目指しています。

薬剤耐性菌が産生する酵素メタロ-β-ラクタマーゼの分子構造(オレンジの球体はZn(II)イオンです)

薬剤耐性菌が産生する酵素メタロ-β-ラクタマーゼの分子構造(オレンジの球体はZn(II)イオンです)

物質材料工学分野

材料物性

金属材料はなぜ強いのか? どうしたらもっと強くなるのか? どのように変形するのか? どうやって破壊するのか?といった疑問に答えるために、大きな単結晶や非常に小さな超微細結晶粒材料、高純度材料などを用いた実験とコンピュータ・シミュレーションによる理論解析を行い、原子1つ1つのナノレベルから金属材料について調べ、より安全な材料の開発に役立てています。

金属材料中をき裂がすすむ過程の原子構造シミュレーション

金属材料中をき裂がすすむ過程の原子構造シミュレーション

材料構造制御

安心・安全な社会の構築には、目に見えないガスを可視化(検出)することが重要です。例えば、ガス漏れを察知できれば防災に繋がり、人間の呼気や皮膚からガス検出することで健康管理に繋がります。そこで、水熱処理、電気化学処理、化学気相成長によって材料の形や構造を制御し、マイクロ・ナノオーダーのデバイスを開発しています。またその特性評価を通じて、新しい機能を見出しています。

ナノサイズのガス吸着アンテナがくし形電極(5μmギャップ、50本くし歯)に密集したデバイス

ナノサイズのガス吸着アンテナがくし形電極(5μmギャップ、50本くし歯)に密集したデバイス

エコプロセッシング

金属、セラミックス、半導体等、私たちの生活を支える多くの材料は、常に進化していて、その製造方法もまた、日進月歩で開発されています。強磁場や強電場等、これまでに無かった手法を用いて、高機能の半導体薄膜や陽極酸化薄膜さらにはゼオライト微粒子製造に挑戦しています。

2テスラの磁場中で製造したアルミニウムの陽極酸化皮膜

2テスラの磁場中で製造したアルミニウムの陽極酸化皮膜

材料組織・界面制御

人のように材料も個性的な顔(微細組織)を持っています。また、その顔つきにより材料の性格(特性)もかわります。電子顕微鏡等を駆使してナノからミクロスケールで材料を観察すると、その素顔はよりはっきりとわかり、新材料開発のヒントを与えてくれます。「微細組織を解析し設計・制御する」ことで、太陽電池用材料、タービン用耐熱材料などの社会を支える基盤材料の研究開発を行っています。

次世代航空機ジェットエンジン用超高温材料として開発が進められている MoSiBTiC合金の2次元走査型電子顕微鏡像と同視野から Mo5SiB2相のみを抽出した3次元像

次世代航空機ジェットエンジン用超高温材料として開発が進められている MoSiBTiC合金の2次元走査型電子顕微鏡像と同視野から Mo5SiB2相のみを抽出した3次元像

先端材料

材料の強さ、機能は、材料を構成するマイクロスケールの微視組織に支配されており、高性能材料を開発するためには、微視組織の性質・機能を明らかにする必要があります。そこで、世界初となる材料の微視組織から作製したミクロンサイズの微小試験片の機械的性質評価や、透過型電子顕微鏡を用いた微細構造の解析により、高性能・高機能先端材料を設計・開発を行っています。

世界最小の超微小切欠付き曲げ試験片。人間の髪の毛の断面の1/10より小さい試験片について、破壊靭性や疲労特性の計測に世界初で成功しました。

世界最小の超微小切欠付き曲げ試験片。人間の髪の毛の断面の1/10より小さい試験片について、破壊靭性や疲労特性の計測に世界初で成功しました。

環境調和材料

地球温暖化現象に代表される環境問題は私たちの身近な危機迫る問題になりつつあります。そこで私たちは、自動車や鉄道車両、航空機といった輸送機器に欠かせない金属材料を軽量化することで省エネルギー社会構築に貢献しようと考えました。現在は、高強度で熱にも強く錆び難い「長周期積層構造型マグネシウム合金」の開発を行っています。

高強度マグネシウム合金の透過電子顕微鏡写真。白いコントラストは亜鉛とイットリウム元素に対応します。原子レベルの組織制御により従来材料を凌駕する高強度材料を開発することが出来ます。

高強度マグネシウム合金の透過電子顕微鏡写真。白いコントラストは亜鉛とイットリウム元素に対応します。原子レベルの組織制御により従来材料を凌駕する高強度材料を開発することが出来ます。

機能材料設計

セラミックス材料を中心に、優れた機能を持つ材料の創製を目指して研究開発を行っています。新しい材料製造プロセスや先進的な微細構造制御技術を案出しながら、環境・エネルギー分野への応用が期待できる膜材料や燃料電池用材料について研究しています。膜材料の研究では分子サイズオーダーの小さな孔を有するゼオライトと呼ばれる物質に、また燃料電池用材料の研究では次世代型として注目される低温作動固体酸化物形燃料電池に関する研究を進めています。

電解質多層膜からなる高性能な固体酸化物形燃料電池の走査型電子顕微鏡写真。YSZとSDCで示された層が電解質で、Ni-YSZとLSCFと記されたところは電極。

電解質多層膜からなる高性能な固体酸化物形燃料電池の走査型電子顕微鏡写真。YSZとSDCで示された層が電解質で、Ni-YSZとLSCFと記されたところは電極。

ナノカーボン材料

炭素は軽くて強く、さまざまな優れた特性を示し、環境にやさしい上に入手しやすい優秀な材料です。フラーレンやナノチューブのように炭素でナノ材料をつくると、従来の材料では実現できなかった機能を持たせられる可能性があります。我々は独自のナノカーボン材料を開発して、資源・環境・エネルギー・医療・輸送・情報などの幅広い分野で課題の解決に取り組みます。

新開発の壷型ナノ物質「カーボンナノポット」の透過電子顕微鏡像と構造模式図

新開発の壷型ナノ物質「カーボンナノポット」の透過電子顕微鏡像と構造模式図

微細構造解析

物質・材料のさらなる高性能化・高機能化には、原子・ナノスケールでの組織制御が極めて重要となります。本研究室では、透過電子顕微鏡によるナノ構造解析を行い、形状記憶合金などの機能性材料やTi基合金など構造材料の高性能化を図るとともに、新規材料の開発に向けた材料設計指針に関する研究を行っています。

高温形状記憶合金として期待されるジルコニウム合金の透過電子顕微鏡像。

高温形状記憶合金として期待されるジルコニウム合金の透過電子顕微鏡像。

固体力学

工業製品は、高機能かつ安全に長く使用できることが望まれています。そのためには、構成材料の力学挙動を高精度に予測する解析手法が必要です。本研究室では、主に構造材料を対象として、微視的変形機構に基づき巨視的な力学挙動を評価可能な数値解析手法の開発と共に、その材料設計や構造設計への応用に関する研究を行なっています。

熊大マグネシウム合金の変形解析結果。微視構造と単結晶特性を考慮して不均一変形が定量的に評価できます。

熊大マグネシウム合金の変形解析結果。微視構造と単結晶特性を考慮して不均一変形が定量的に評価できます。