時代の要請に応える

世界水準の教育拠点と

社会貢献への取り組み

最先端研究

先端マグネシウム国際センター長 河村 能人

先進マグネシウム国際センター長
河村 能人

2015年3月に設立された KUMADAIマグネシウム合金の新研究拠点

2015年3月に設立された
KUMADAIマグネシウム合金の新研究拠点

軽さと強さ
高い耐熱性を兼ね備えた
今までにないマグネシウム合金を開発

 実用金属の中で最も軽いのがマグネシウム。曲がりにくさと放熱性も高いことから、パソコンや携帯電話、デジタルカメラなどの情報家電にも使われています。しかしマグネシウムは強度や耐熱性が弱く、それらの強度を上げる研究が盛んに行われています。この分野でいち早く成果をあげたのが、熊本大学自然科学研究科です。2001年には、室温で超々ジュラルミンの2倍の強さを持つ「ナノ結晶合金」を、また2003年には製造法が簡単で低コストで作れる「鋳造合金」を開発しました。
これらは「KUMADAIマグネシウム合金」と呼ばれ、日本の産業界はもちろん、世界中からも注目を集めています。KUMADAIマグネシウム合金を自動車や航空機に使用すると、車体や機体が軽くなるため燃費が向上し、二酸化炭素排出の削減にもつながります。そのため「エコにつながる素材」として早期の実現化が望まれているのです。もっと身近なものでは、自動車や車いす、草刈り機の軽量化が可能になるなど、快適な暮らしにつながる素材としても期待されています。
現在はこの素材の実用化を目指して産学官の大型プロジェクトを進めています。また、2015年3月にはマグネシウムのための研究設備を集約した新研究拠点が設立され、基礎研究から応用研究までを効率的に実施する環境が整備されました。この新しい素材を基盤とした新産業が熊本で発展すれば、地域の企業の発展はもちろん、日本中の大企業を熊本に呼び込むという効果も期待できます。熊大、そして熊本が「次世代マグネシウム合金」の一大研究開発拠点となることを目指し、人材の育成と素材の開発研究に取り組んでいます。

KUMADAIマグネシウム合金の力学特性を評価する材料試験装置

KUMADAIマグネシウム合金の力学特性を評価する材料試験装置

先端マグネシウム国際センター長 河村 能人

先進マグネシウム国際センター長
河村 能人

2015年3月に設立された KUMADAIマグネシウム合金の新研究拠点

2015年3月に設立された
KUMADAIマグネシウム合金の新研究拠点

社会貢献

くまもと水循環・減災研究教育センター センター長 柿本 竜治

くまもと水循環・減災研究教育センター長
柿本 竜治

熊本大学ましきラボ(秋津川河川公園内)

熊本大学ましきラボ(秋津川河川公園内)

熊本地震からの復興支援
大学と住民の協働まちづくり拠点 ましきラボ

 「ましきラボ」は、熊本大学の教員及び学生が熊本地震で甚大な被害を受けた益城町の復興支援を行う拠点として開設されました。復興の現場で多くの教員や学生が住民と対話しながら、行政と住民の懸け橋となり地域の将来像を描く支援を行っています。

 ましきラボの基本的な活動は、定期的なオープンラボと不定期に開催する復興やまちづくりに関するシンポジュウムやイベントです。オープンラボは、毎週土曜日の14~17時に教員と数名の学生がラボに待機し、来訪者と意見交換を行っています。これまでにオープンラボは、145回を数え、800名以上の方が来所されています(令和2年2月末時点)。イベントの中には、益城町を題材にした授業の演習や卒業研究等の成果発表会もあり、学生も積極的に活動しています。

 ましきラボ来所者の話は、自宅再建に関する相談から復興まちづくりの展開の仕方のアドバイス依頼まで様々です。現在、益城町では復興事業として被災の激しかった町の中心部を貫く県道熊本高森線の拡幅工事やその沿道で区画整理事業が行われています。これらの復興事業は住民の間で賛否が分かれ、大きな話題となりました。そこで、ましきラボでは、活動を通じて得られた住民からの意見や教員の専門的な知見をまとめ熊本県知事、および益城町町長に道路拡幅とまちづくりに関する提言を行いました。この提言が、今後の益城町のよりよい復興まちづくりにつながることを期待しています。

 ましきラボは、益城町の復興支援活動を通じて住民が日常生活のなかで“フラリ”と立ち寄りやすい施設になっています。一方、ましきラボの活動に参加する学生は、貴重な復興現場での経験を通じて新たな気づきが得られて技術者として日々成長しています。

道路拡幅とまちづくりに関する「12の提言」を提出

道路拡幅とまちづくりに関する「12の提言」を提出

くまもと水循環・減災研究教育センター センター長 柿本 竜治

くまもと水循環・減災研究教育センター長
柿本 竜治

熊本大学ましきラボ(秋津川河川公園内)

熊本大学ましきラボ(秋津川河川公園内)

大学院先端科学研究部 シニア准教授 松田 俊郎

大学院先端科学研究部 シニア准教授
松田 俊郎

EVバス社会実装研究

熊本から始まる電気自動車技術が未来を拓く
:地域のSDGsに貢献するEVバスの研究開発

 2050年のカーボンニュートラル(CO2排出ゼロ)実現に向けて、地域のSDGsに貢献するEV(電動)バスの研究開発を進めています。

 EVバスは電気で走るので、走行中の排気ガスやCO2の排出がありません。また、大容量のリチウムイオン電池を搭載するので、太陽光などの再生可能エネルギーを蓄えて夜間に施設の電力として使うことや、災害時の非常電源として活用することも可能です。

 熊本大学では、EV路線バスとEVスクールバスの社会実装を主要テーマとして研究に取り組んでいます。運転の大幅な簡素化、再生可能エネルギー活用、地域の強靭化等の新たな付加価値を実現する為に、熊本大学独自のアイデアを、社会実装構想、研究開発の内容、EVバスの設計に織り込み、実証試験を行っています。

 EV路線バス研究開発では、量産されているEV乗用車のバッテリーやモーターを活用した大型車用の電動システムと、従来ディーゼルバスを改造してEVバスを製造する技術を開発しました。さらにEVバスの付加価値として、ギヤ変速を不要にする大容量減速機、モーターの回生機能を利用した熊本大学独自の1ペダル制御方法(アクセルペダル操作で車両の加速と減速を制御可能)を開発し、運転士の運転操作を大幅に簡素化しました。開発した技術を搭載した実証試験車は、熊本市での実証試験(2018年度)、横浜市での実証試験(2020年度)で高い評価を得ています。

熊本実証事業の動画 
よみがえれ!EVバスプロジェクト始動【 #日産ダッシュボード 61号】 – YouTube

横浜実証事業の動画 
横浜市におけるEVバスの実証実験

 EVスクールバス実用化研究では、学校統廃合やガソリンスタンド廃業が進む全国の中山間地での活用を想定し、再生可能エネルギー連系、非常電源などの機能を織り込んで、熊本県球磨村で実証試験(2022年度、2023年度)を行い、地域での有用性を検証しています。

球磨村実証事業の動画 
球磨村電動スクールバス事業説明

環境省エコライフフェア2018に出展したEV路線バスよかエコバス号

環境省エコライフフェア2018に出展したEV路線バスよかエコバス号

大学院先端科学研究部 シニア准教授 松田 俊郎

大学院先端科学研究部 シニア准教授
松田 俊郎

EVバス社会実装研究