教員特集

『ビッグデータ』による未来予測で
社会を変革する

Yasushi SAKURAI
櫻井 保志
教授
工学部 情報電気工学科
大学院先端化学研究部
PROFILE
1991年 同志社大学 工学部 電気工学科卒業、日本電信電話株式会社(NTT)入社。1999年 奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科 博士後期課程修了(工学博士)、1998年から2013年までNTT研究所に所属 (NTTコミュニケーション科学基礎研究所など)、2004年 カーネギーメロン大学 客員研究員、2013年から熊本大学 教授。ACM KDD、SIGMOD、WWWなど世界トップの国際会議への継続的な採択、さらにKDD Best paper awardsでは日本人初・唯一の受賞を果たす(2008、2010)。トヨタ自動車、富士通、ソニー、三菱重工業、日立製作所などの大手メーカーや京都大学、カーネギーメロン大学と共同研究を行うなどグローバルに活躍。

日本独自の研究で、社会活動の 
最適化に向けた技術を開発

 実用的かつインパクトのある技術で社会の大きな問題解決に立ち向かう「社会貢献」、応用範囲が広い基盤研究とシステム開発の負荷を軽減するための「技術者貢献」、ほかの研究者のインスピレーションを喚起し、共に技術レベルを高めていける「継続性ある研究」。“理論”と“実践”に基づく情報工学研究によって、これらの実現に取り組んでいるのが櫻井 教授です。「50年前にアメリカで生まれたソフトウェアですが、現在もその中心となっているのはマイクロソフトやグーグルなどのアメリカ企業です。日本人研究者としてやるべきは日本独自の研究を進めること。私たちはIoTのビッグデータを解析して社会活動を最適化するための技術開発に取り組むことで、世界を長年リードしてきた製造業などの日本産業を変革したいと考えています」。

 そこで櫻井教授が取り組んでいるのが、大規模な連携による産学共同研究プロジェクト。様々な企業と共同研究しながら将来予測や要因分析、リアルタイム情報提供を行う高度な時系列ビッグデータ解析技術を行い、社会に役立つ独自の技術サービスを提供。その代表的なものが自動車業界における運転支援サービスやスマート工場での取り組みです。「車業界では自動運転などのソフトウェアが重要視されてきています。そこでIoTビッグデータ解析によって制御装置に付加価値を与えられれば」。たとえば自動運転においては、ビッグデータ解析技術を用いた高度なサービスを用いて、人の動きをパターン化。歩道から子供が飛び出したとき、緊急回避の運転モードに切り替わるなどの予測技術を開発しています。

 また『スマート工場プロジェクト』においては、因果関係のパターン化により未来を予測。どんな状態で不良品や設備トラブルが起こるかデータを集めて要因を分析し、事前に対策しようとの試みです。これが実現化されればメンテナンス時期やトラブルをあらかじめ予測し、機械が自動的に部品を交換することでトラブルを回避できるようになります。「IoTは研究室だけでやっても意味がありません。様々な企業と共同研究を行い、現場の技術責任者から問題点を聞き出し、解決に向けて進むことが大切」と櫻井教授は語ります。

 こうした技術をより自由に社会へ広げようと、2018年には大学発となるソフトウェアのベンチャー企業を設立。新たな産学連携体制の構築を進めています。「企業が『大学の技術を使いたい』と考えたとき、大学の研究組織では限界がありますから、ベンチャー企業を立ち上げることによって企業へのアフターフォローやソフトウェアのバージョンアップ、マニュアル作りにも関わることができるようになります」

実社会の問題解決へ挑み 
社会貢献の醍醐味を味わう

 このほかにもウェブ上のユーザ行動を解析して未来の動向を予測する取り組みや、医療従事者の負担軽減につながるサービスを生み出す医療情報の解析など、実社会の問題解決へ挑む櫻井教授。活動には学生や若手研究者たちも携わっています。「自ら新技術を生み出すためにも、論文を書くだけではダメです。企業との打ち合わせなどに参加してどんなことが問題になっているか学ぶと、新たな研究課題を創出できるようになります。学生にとってもやり甲斐やモチベーションアップになると思います」

 櫻井教授のもとには情報技術分野における日本の若手トップ研究者・松原靖子助教も在籍しており、「後に続く若手スター研究者を育成したい」と櫻井教授。その一環としてカーネギーメロン大学への海外派遣プログラムがあり、世界中から集まった同年代の人たちと切磋琢磨しながら世界トップクラスの研究に携わることができます。
 また学科の授業では、講義だけではなく「仕事とは?」「技術を作るとは?」など社会活動における根本を指導。「私自身、かつてエンジニアとして民間企業で携わっていましたから。大きな仕事、大きな貢献をしようと思えば自ら成長しなくてはいけません。成果を通じて誇りを持ち、仲間と志を一つにして目標へ向かう。それが仕事の醍醐味ではないでしょうか」。社会で働くことへの意義も学べる場となっています。