半導体デバイス工学課程

研究内容

アナログ高周波集積回路の低消費電力設計

 現代の社会生活に欠かせない半導体集積回路には性能向上が求められる一方で、モバイル用途向けに小型化や低炭素社会に向けた消費電力の低減など、相反する特性をバランスよく設計する必要があります。本研究では主に性能ボトルネックとなる通信システムを題材として、これらの相反する特性を両立する回路設計技術を設計から試作・評価まで一貫して研究し、国内外で需要が旺盛な半導体デバイスの性能向上に貢献しています。

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半導体集積回路の設計例: [左上] 光通信用の高効率ドライバ(180nmCMOS)、[右上] テラヘルツ帯無線通信向けInP光集積回路、[下] 低消費電力チップ内通信システム(90nmCMOS)

イメージセンサーのノイズ抑制

 映像撮影や機械の自動認識のための映像を電気信号に変換するイメージセンサーでは、ノイズが画質を劣化させ、自動認識エラーの原因となります。このノイズの発生メカニズムの解明と抑制のために、ノイズの原因となる半導体中の不純物や欠陥の挙動を実験/評価とコンピュータシミュレーションを組み合わせ、更に抑制手法を確立してイメージセンサーの高性能化に貢献します。

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クリーンルームの紹介動画(Youtube)

イメージセンサーの模式図(左)および白点・暗電流の画像例(右)

エネルギー貯蔵・変換材料

 誘電体は電気を瞬時に貯蔵・放出する機能を持ち、半導体デバイスの高速かつ安定な動作に不可欠な材料です。さらに一部の誘電体には、応力や光を電気に変換するエネルギー変換の機能があります。これらの機能は、物質の電子状態、結晶構造、格子欠陥やドメイン構造と密接に関わっています。我々は実験と理論計算を連携した研究により、原子や電子の振る舞いに着眼して新しい誘電体を設計しています。セラミックスや、薄膜、単結晶を合成し、次世代の半導体デバイスやエネルギー変換デバイスに貢献する新規材料の開発に取り組んでいます。

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チタン酸バリウム強誘電体セラミックスのマイクロメートルスケールから原子スケールまでの階層的な構造。微量の不純物元素(Fe)や酸素空孔(VO··)も特性に大きな影響を与える

機能の源をナノ・原子スケールで観る

 私たちのグループでは、半導体デバイスが機能を示したり、不具合を起こしたりする仕組み(メカニズム)を明らかにして、その理解を基に新デバイスの開発や性能向上に貢献することを目指しています。研究を行うためのツールとして、原子・電子のスケールでものを観ることができる「走査透過型電子顕微鏡法(STEM)」や原子・電子のスケールでシミュレーションができる「第一原理計算」などを使っています。例えば、図の例では、酸化物半導体として知られる酸化亜鉛(ZnO)において、電流を流す妨げになっている「粒界」の構造を原子レベルで解明しました。

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ZnO粒界の原子配列((左)原子分解能STEM像、(右)第一原理計算による安定原子配列)

次世代化合物半導体デバイス

 従来の半導体材料よりも優れた物性値を持つ次世代半導体材料の開発が進んでいますが、特定のデバイス構造でしか実用化はされていません。なぜならば次世代半導体材料の表面・界面特性がほとんど明らかになっていないことが原因に挙げられます。半導体の表面・界面特性とトランジスタ動作安定性には密接な関係があります。したがって表面を含めた接合界面の電子物性を評価し、得られた知見を基にプロセス技術を開拓することが、物性の本質的な理解とデバイス性能向上に直結します。そこで私たちは従来手法では評価が困難な次世代半導体デバイスの表面・界面特性の評価手法の新規開発と次世代半導体デバイスの実現に向けたプロセス技術開発を行っています。

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次世代化合物半導体デバイスのエネルギーバンド図と電子物性の評価

三次元積層LSIシステム設計技術

 現在、半導体LSIを含むシステムを構築する際には、プリント配線基板やインターポーザ(配線用シリコンチップ)上に平面状に並べて配線するのが一般的です。本研究は更なる集積化とチップ間通信の高容量化・高速化、かつ低消費電力化のために、TSV(Through-Silicon-Via:シリコン貫通ビア)を用いた三次元積層によるLSIチップ集積システムを対象とした設計技術の研究を行っています。対象システムに含まれるマイクロプロセッサ・ソフトウェア・専用ハードウェア(ディジタル論理回路)・センサ・アクチュエータ・通信・電源を、部品化(コンポーネント化)して統合する設計技術により、アプリケーション動作時の性能と消費電力をシミュレーション・エミュレーションにより製造前に検証することが出来るようにすることを目指します。

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三次元積層LSIシステム設計技術: [左] LSIチップの部品化とチップ間通信によるシステム統合の概念、[右] FPGAを用いた三次元LSI積層システムエミュレータの例