工学部長連川 貞弘 少し古い話しですが、「科学忍者隊ガッチャマン」というテレビアニメがありました。私たち世代は、登場人物の1人であるガッチャマンの生みの親の南部博士に憧れたものです。その「博士」が、今、日本では危機的状況になっています。

 新聞等のメディアでもしばしば報道されていますが、第四次産業御革命に向けて破壊的な変化を迎えている今、主な国では博士号取得者の数が急増しているのと対照的に、日本ではここ10年間で16%も減少しています。米国や英国、ドイツ、韓国に比べて半数以下の状態です。現在、「百年に一度の大改革の時代」と言われる自動車産業をはじめ、あらゆる分野で従来の労働集約型社会から人工知能(AI)やデータサイエンスの活用に基づいた知的集約型社会への転換が急速に進みつつあります。海外では、多彩な博士が原動力となってこのような破壊的イノベーションを推進しています。翻って日本では、日経新聞アンケートにおいて研究人材の不足と回答した企業が約40%にものぼるにもかかわらず、大学では博士学位取得後の就職への不安からか、多くの優秀な学生が博士前期(修士)修了とともに就職している状況です。科学技術立国として発展してきた日本ですが、今の状況が続けば、将来は他国の後塵を拝する状況となることも懸念されます。最近では、危機感を持った日本企業でも高額報酬で優秀な博士を確保しようとする例も増えてきています。本冊子の主な読者は、本学工学部学生のみなさんや工学部を志望する高校生の皆さんかと思います。少し厳しい言い方かもしれませんが、みなさんは将来の日本に対して責任を負う立場にあります。皆さんが受け継いだ社会をさらに世界に誇れるものとして次世代に発展的に伝えていくことが最高学府で学んだ者の責務ではないでしょうか。

 本学工学系では、博士後期課程修了後の平均就職率は82%から97%と堅調で、大学や研究機関ばかりではなく、最近は民間企業への就職者が増加しています。また、博士前後期課程を通じて産学連携への参画機会を提供し、課程修了後の当該企業への就職を念頭に、大学と企業との協働で社会が求める博士人材を育成する仕組み(Aim Highプログラム†)も整えています。

 熊本大学工学部・大学院自然科学教育部(工学系)で、次世代を拓く博士人材として、皆さんの才能を花開かせてみませんか。

†Aim Highプログラム パンフレットはこちら