諸岡 健一 教授大学院先端科学研究部
医工学部門
諸岡 健一 教授

ここでは、「先端科学研究部とは?」「医工連携とは?」ということについて説明していきます。
あまり耳慣れない言葉かもしれませんが、本記事を読めば、少し詳しくなれるかも!

「先端科学研究部」という組織について。

熊本大学には、「先端科学研究部」という教員の組織があります。
大学では、学部生の皆さんは「工学部」、大学院生の皆さんは「自然科学教育部」に、それぞれ所属しているわけですが、実は同じように、私たち教員も「先端科学研究部」というところに所属しているのです。

そして、例えば工学部では、学ぶ分野ごとに「学科」というグループを作っているかと思います。「土木建築学科」、「機械数理工学科」、「材料・応用化学科」、「情報電気工学科」、「半導体デバイス工学課程」…というかたちです(令和6年から「課程」が設置されたので少しややこしいですが)。同じように自然科学教育部だと、「専攻」というグループごとに分かれています。そうなると教員の組織である「先端科学研究部」も、グループごとに分かれることは想像に難くありません。このグループを「部門」とよんでいます。

そして実は、「先端科学研究部」は、令和5年4月に、そのグループ分けを変えました。5部門だったものが、6部門に増えて、細かい変更点はいろいろあるのですが、新たに設置されたのが「医工学部門」であり、今回キーワードとして取り上げたいのが、この部門で行われている「医工連携」研究です。

「医工連携」とは。

医工連携研究は、医学におけるニーズを、工学が所有するシーズで解決することを目的としています。例えば、CTやMRIによって、人体の内部を画像化した医用画像が得られます。この画像の用途として、医師は画像内に腫瘍がどこにあるかを目視で確認し診断・治療を行います。しかし、腫瘍は画像内で必ずしも明確に映っているとは限らず、そのため腫瘍を見つけることが難しく見落とす可能性があります。そこで、確実に腫瘍を検出したいという医学のニーズを解決するために、近年様々な分野で目覚ましい成果を挙げている人工知能(Artificial Intelligence: AI)を使って、腫瘍を自動的に検出する技術を工学者が開発します。このように、医学のニーズは、治療や診断の確実性・安全性を高めることを目指しており、それを工学者の技術で実現することで、安心・確実な医療を患者さんに提供することができます。また、医工連携は、上述の例のような情報処理だけでなく、薬や機器の開発などもあり、前者は薬学・化学、後者は機械・材料の研究者が携わり、まさに様々な医学・工学分野が連携して研究を行っています。

どんな研究をしている先生がいるの?

ここでは、具体的な内容について、少し紹介します。

医工学部門は、生命分子・医用材料(化学)、医用福祉工学(情報・電子)、あつまる新シルク蚕業開発共同研究(機械)、の3つの工学系の分野で構成され、それぞれの技術を活かして安心・安全な医療の実現を目指し研究を行っています。
私は、医用福祉工学分野に所属し、医療で得られる画像を使った情報処理(以後、医療画像情報処理)や、医療画像から人体の臓器・筋骨格の3次元形状情報(以後、3次元モデル)を生成する研究、更に医療画像情報処理技術とモデルを組み合わせ、医療・看護・福祉に関わるヒトを支援するシステムについて研究を行っています。最近の主な研究の一つに、3次元画像認識AIを使って、癌の診断法の一つである細胞診断を支援するクラウドシステムを開発し、企業と共に製品化を進めています。これが実用化されたら、国内外の様々な地域にいる人たちが標本データを支援クラウドシステムに上げれば、均質ながん検診を受診できる社会環境を提供できます。これにより、癌細胞見落とし率0%の達成や、がん検診受診率の向上などの社会問題を解決でき、持続可能な開発目標の一つである、がんに負けない社会の実現が期待できます。