勝田先生(広報委員)  新型コロナウイルスの感染拡大により、各大学も状況に応じた対応に追われていると思います。もちろん第一に考えることは感染拡大の防止です。その上で熊本大学として考える教育レベルを維持する必要があり、教員の立場としては様々な工夫のもと各教員が授業や研究活動を進めていると思います。
 残念ながら現在のコロナ対策は「その時点において最適と思われる」対応を取らざるを得ません。実際に2019年度の本学卒業式は中止となりましたが、執り行われる予定であった時点では県下で5名程度の感染者数でした。振り返ってみると「開催できたのではないか?」との意見もあるかもしれません。しかし、新型コロナウイルスに関する情報があまりなかった時点ではやはり命優先で中止せざるを得なかったと思われます。
 一方で、1年間いわゆる「コロナ禍」における生活で少しずつ新型コロナウイルスとの対峙方法もわかってきたのも事実です。
 今回の座談会は熊本大学執行部の先生方にどのようなことを考えながらコロナ対応策が打ち出されているのか、そして学生さんはどのように受け止めていたのかをお互いに把握して、来年度以降のコロナ対策に生かせていければと思っています。
 それではまず、事務の教務担当に対して保護者の方や学生からどのような問い合わせがあったのか、教えていただければと思います。

勝田先生勝田先生

野口係長(教務担当)  授業が対面から遠隔へ、遠隔から一部対面へと切り替わったので、学期ごとに今後どうなるんだろうという不安をお持ちの方もいて、中には電話で直接不安を訴えかけられた親御さんもおられました。授業は遠隔がいいという学生もいたりして、そこは学生、保護者によってお考えが違うのかなと思います。お問い合わせがあることに対して、一つ一つお答えしていったというところです。

勝田先生(広報委員)  ありがとうございます。続いて、教員側でどのように意思決定がなされたか、連川先生にお話しいただいてもいいですか。

連川先生(工学部長)  全学的には、学長を議長とするコロナ対策会議が2月に立ち上がり、定期的に会議が行われ、そこで全学の意志決定が取り決められました。4月のコロナ対策会議では遠隔授業をするという話はほとんどでておらず、4月始めの工学部教授会でも、部屋に入れる学生の数を減らす形式で授業を行うとしていました。その後、感染が拡大し、対面での実施は良くないのでは?という話もでて、急遽、大学としてZOOMのライセンスを購入し遠隔授業を本格的に導入するということになりました。
 工学部では、4月半ばに、ZOOMを使って遠隔授業をすることを執行部で決めて、各教員に協力のお願いをしました。その時点では、教員側も遠隔授業の経験がある人はほとんどいない状態でした。その中で、経験がある人にワーキンググループを作っていただいて、教員みんなでそれを勉強しながら、ZOOMの使い方を試行錯誤しながら進めていったというところです。
 現在も基本的にはZOOM中心で授業を進めています。ところが、特に1年生はほとんど大学に来ない状況が続いており、友達も作りにくい、サークルや部活もできないということもありましたので、第3タームからは、1年生の科目を中心に一部遠隔、一部対面で授業をする、というハイブリッド形式で授業を進め、交友関係を広げやすい環境を作ろうとしています。2、3学年は遠隔授業を中心とし、実験実習科目については教育効果が上がらないということもあるので、第3タームからは許可制で実施することにしました。

連川先生連川先生

勝田先生(広報委員)  連川先生のお話しは教員側の思いや考え方に基づいた意思決定なのですが、学生の目線からどんなことを感じたり、不自由に思ったり、過ごしにくいなと思いましたか?

水田さん(機械数理)  3月、4月にコロナがはやりだして、大学側がこういう授業形態でしてというのをもう少し早く知りたかったなと思いました。基本的には掲示板から情報を得ていましたが、時間割がなかなか分からず、4月のバイトのシフトを組むのに苦労したということもありました。

井上さん(マテ)  私は4年生で研究室に配属しているので、どのような形式で授業が行われていたのか、あまり分かりません。ただ私が1年生のときは、わからないことを先輩に聞いて助けられたことが多くありました。サークル活動もあまり行えなかったのですが、コロナ禍であっても上と下とのつながりを作る機会を設けることはやっぱり大事だなと思います。他の学部ではZOOMで懇親会があったというのを聞いたので、そういうのが工学部でもあったらよかったのかなと思います。

濵﨑さん(建築)  私は4年生ですでにサークルは引退していたのですが、健康のために顔を出す程度はしようと考えていました。でも、サークル活動もできないということで、早くしたいねということを友達と言い合っていました。申請してサークル活動ができる状態になった時期は、ハンドボールは接触が多いので、マスクを付けながらすることで対応していました。いろんな部活の人から、運動したいねという話はよく聞きましたね。

瀬戸さん(情電)  私の学科では、4月に新入生歓迎会を毎年していますが、それができなくなってしまいました。男女の割合で女子が少ないというのもあって、毎年その歓迎会で先輩とのつながりを得ていたのですが、それができなくて今年の1年生は孤立していたのかなと思います。ただ私は情電の学生会に所属しているのですが、新入生歓迎会の代わりに、学生会への勧誘をZOOMを使って行いました。通常時であれば学生会についての質問が多いのですが、今年に関しては時間割の組み方とか授業のこととか質問が多くて、1年生は不安に思っている子が多かったかなと思います。

水田さん(機械数理)  自分が1年生の時は新入生歓迎会のBBQがあり、そこで縦のつながりができたというのがありますが、今年はそのような歓迎会ができず、1年生とは話していないですね。

左から、井上さん、濵﨑さん、水田さん左から、井上さん、濵﨑さん、水田さん

勝田先生(広報委員)  学生さんが不便というか、問題だと思っていることを大まかに分けると、「情報の伝達」、特に「孤立化、特に上下のつながり」ということのようですが、教員サイドとして何かこれらに対応することはされていましたか。

辻本先生(土木)  土木建築学科は担任制度、およびインストラクター制度を作っています。1年生は担任の先生以外にも、そういったかたちで教員と連絡が取りやすい環境を用意していました。ただ、入学と同時に遠隔授業が決定されたので、Moodleの使い方がわからないとか小さいトラブルは色々ありました。最終的には人海戦術的に先生方に対応していただき、少しずつ意思疎通はとれるようにしていきましたね。

西本先生(情電)  情報電気工学科については、同じ学年の学生同士のつながりはチューター制度などでなんとか対応できるかなと思っているのですが、学年間の縦でつながりはサークル活動が重要だと認識しています。ただ・・・コロナでサークル活動が厳しいということになると、なかなか難しいですね。うちの学科は学生会が積極的に活動しているので、その点はよかったかなと思いますね。
瀬戸さんがお話ししていたように、2~4年生はある程度の人間関係の構築ができていると思うのであまり心配はしていませんでしたが、1年生は入学して何も大学に関してわからない状態だったと思うので、学生会に助けてもらったのではないかと思います。
あとは、正直我々も未知のウイルスとの遭遇ということで、どうしていいかわからない、目の前にあることを処理していきながらも模索するという感じで対応してきたので、今振り返れば迷惑をかけてしまったかなということもあると思います。

髙藤先生(化学)  材料・応用化学科では、学生同士の連携を促す機会を作れておらず、担任の先生が随分と1年生をZOOMでつないだり、個別の相談に対応したりと頑張っていただいていたというところですね。次年度も同じような状況になる可能性もあるので準備をしていかないといけないかなということは思っています。
横の関係に関しては同じ学年の学生をグループ分けして、組み合わせを変えてハイブリッド授業を行うなどいろいろと交流をもってもらうように配慮しましたが、それは週何回かで限られた時間でした。年度の後半になると互いに話したり集まったりということはあったようですが、そこに至るまでは時間がかかったのではと思います。縦の関係を作る点は、今後、チューターやメンターの制度を作るようなことは考えていきたいなと思います。
それに、アクティブで社交性がある学生は、大学外で交流を広げるような活動をしているかもしれませんが、おとなしくて話しかけるのが不得意な学生もいたりするので、そういう学生のほうが一人で悩んでたりするのかなと心配もあり、ケアも必要なのかなということを担任の先生と話した記憶があります。そういう意味では、ひとつの方法だけではなく複数のいろんな機会を設けた方がいいのかもしれないと思いますね。

井上さん(マテ)  たしかに、サークルの勧誘活動でも、Twitterで「ZOOMで説明会やるので来て下さい」という発信をしているのを見かけましたが、Twitterで「♯春から熊大」というようなハッシュタグを探して、コンタクトを取ってくる人はかなりアクティブな人に限られるのかなと思います。

勝田先生(広報委員)  工学部や各学科でTwitterのアカウントを持っていますが、学部・学科のTwitterとサークル勧誘の情報をつなげることができれば、情報を得ることができなかった学生さんにも広げることはできるかもしれないですね。Twitterなど今あるツールを有効活用して、情報をつなげていくことも考えていきたいですね。