工学部長連川 貞弘 昨年の工学部ニュースレター「かけはし」をお届けする時期において、新型コロナウイルス感染症の爆発的拡大により、世界の様相が一変してしまうことを誰が予想したでしょうか。このような状況の下で、命を守るために最前線で戦っておられます医療従事者の方々や私達の生活を支えて頂いていますエッセンシャルワーカーの方々への敬意と感謝の意をこの場をお借りして表したいと思います。また、この度のコロナ禍においてお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに、罹患された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
さて、コロナ禍にあってなかなか未来に希望を持ちにくくなっている中、あえて夢のあるお話をさせて頂きます。NHKテレビで「ドラえもんの秘密の道具はここまで実現している!!」という番組がありました。ご覧になった方もいらっしゃるかと思います。子供の頃にドラえもんの四次元ポケットから取り出される数々の夢の道具に胸を躍らせた方も多いのではないでしょうか。その夢の道具が次々に現実のものとなり“夢”ではなくなってきています。例えば、「糸なし電話」、携帯電話として実用化され、現在は多くの機能が組み込まれたスマートフォンとして私たちの生活には欠かせないものとなっています。また、「タケコプター」は、ドローン技術を使って近い将来実現するかもしれません。
現在、「百年に一度の大改革の時代」と言われる自動車業界をはじめ、多くの分野で人工知能(AI)やデータサイエンスを活用した知識集約型社会への転換が急速に進みつつあります。電気・情報系分野のみならず、工学、医学、薬学などのあらゆる分野においてAIやデータサイエンスの活用が進んでいくと思われます。今後、ますますドラえもんの夢の道具が現実のものとなってくるでしょう。くしくも、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによりこの流れがより加速化されています。
このような時代を生きる皆さん(おそらく本便りの主な読者は、本学工学部学生の皆さんや工学部を志望する高校生の皆さんかと思います)には、それぞれの専門分野を深めるとともに、是非、「リベラルアーツ」を積極的に学んでほしいと思います。今後の知識集約型社会においては、それぞれの分野においてAIの活用は避けては通れません。AIの能力は時期を待たず人間の能力を超える可能性が高いと思いますが、人間の尊厳を保ちながらAIを活かすためには、“人間中心の”AIの開発・活用が必要です。そのためには、多様な社会を俯瞰的に理解し、価値想像力を養うことに通ずる、倫理、哲学、歴史、音楽などの幅広い教養力が求められます。コロナ禍において自宅で過ごす時間が多くなっていると思います。是非、この時間を有効に用いて、コロナ後に備え、豊かな人間性を育んで下さい。