工学部「半導体デバイス工学課程(仮称)」創設
工学部長連川 貞弘 教授
世界的半導体企業であるTSMC(台湾積体電路製造)が熊本県菊陽町に工場を新設することが発表されて以降、連日のように半導体に関連する話題が新聞やテレビニュースなどのメディアを賑わせています。半導体産業は一時期「斜陽産業」とも呼ばれたことを思うと隔世之感があります。しかしながら、熊本県にはソニーセミコンダクタマニュファクチャリング(SCK)や東京エレクトロン九州など、半導体関連のグローバル企業と地元企業も多数立地しており、国内の半導体産業が過去40年間に大幅に減退する中で、熊本県は、唯一、半導体産業が成長を続けてきた稀有な地域です。このような状況にあって、現在、国内の半導体人材の不足が深刻となっており、国や地方自治体等において、半導体人材育成・確保に向けたさまざまな取組みが行われています。特に、かつての「シリコンアイランド九州」の中心地に位置する熊本大学には、半導体高度技術者・研究者育成への大きな期待が寄せられています。
熊本大学工学部では、令和4年4月に「半導体研究教育センター」を設置し、基礎研究からシステム応用までを網羅する総合的な半導体研究を開始しました。本センターは、令和5年4月には、文部科学省の支援を受け、「半導体・デジタル研究機構」として熊本大学全学を挙げて半導体研究教育を推進する体制に移行いたします。一方、教育面では、令和4年10月に「半導体副教育プログラム」をスタートし、現在、工学部各学科の1年次学生から4年次学生までの83名が履修しています。上記の副教育プログラムでは、SCKの技術者による講義も含まれ、実践的な教育プログラムとなっています。さらに、令和6年4月には、国内の大学で初めてとなる、半導体教育に特化した学士課程である「工学部半導体デバイス工学課程(仮称)」を創設予定です。「課程」という名称は聞き慣れないかもしれませんが、「学科」に相当するものです。同課程においては、半導体研究開発に必要な、物理、化学、数学、材料等の基礎的な学問を学修した上で、半導体デバイスプロセスやシステム設計、デバイス評価技術などの高度な専門知識を学ぶカリキュラムとなっており、さらに、半導体産業の第一線で活躍している研究者・技術者とも連携し実践的な教育も行っていきます。このように、熊本大学工学部は、社会からの期待に応えるべく、世界的な半導体研究・教育拠点の形成を目指して歩みを加速しているところです。
工学部半導体デバイス工学課程(仮称)
https://www.eng.kumamoto-u.ac.jp/department/course/